日本画家・丁子紅子「一番表現したいのは “心”」-ARTFULLインタビュー-

透き通るような白い肌に鮮やかな黒髪の女性は一体何を想うのか、、

見るものの想像力を掻き立てる美しい女性を日本画で描く日本画家の丁子紅子さん。

2021年1月27日(水)から丁子紅子個展「溶け合う時。」を迎える丁子さんに、作家としての生い立ち、作品に込める思い、その美しさを表現する秘訣についてお話を伺いました。


丁子 紅子

丁子 紅子/Choji beniko

1991年 埼玉県大宮出身
現在現代童画会 委員

大宮光陵高等学校美術科卒業
女子美術大学絵画学科日本画専攻卒業

2016年
アートのチカラ2016/新宿伊勢丹
2016正月展/名古屋三越栄店
チョコっとアート展/新宿伊勢丹
MITHUKOSHI ART CUBE/日本橋三越
美人画展/ロス郊外サンタモニカ Bergamot Station Arts Center
2017年
アートのチカラ 2017/新宿伊勢丹/東京
美人画づくし出版記念展 /ギャラリーアートもりもと/東京
アートのチカラ発表展/新宿伊勢丹本館5階ギャラリー/東京
2017ヤングアート旋風アートアートアート。/名古屋松坂屋/名古屋
アートでゆこう!/浦和伊勢丹
堀口徹VS丁子紅子ー鋒ー/銀座モダンアート/東京
Art Square Taipei/圓山大飯店・台北
女絵画展/渋谷東急
2018年
アートのチカラぷち!2018/新宿伊勢丹
日仏現代アート展(ネオジャポニズム共鳴2018)
アートのチカラ選抜展/新宿伊勢丹
フェルメールトリビュート展/MDPギャラリー/東京
KYOTO展/池袋パルコ
2019年
アートのチカラ2019/新宿伊勢丹
美人画づくし弐出版記念展 /ギャラリーアートもりもと/東京
アートフェア東京2019/清アートスペースブース/東京国際フォーラム
中村月子X丁子紅子コラボアート展「紅月」
アートフェア北京/清アートスペースブース
横木安良夫X丁子紅子コラボ展/ギャルリーラー/東京
OSAKA ART FES/阪神梅田/大阪
2020年
阪急Xアートコレクターズ ニュースター達の美術展/阪急梅田/大阪
2020ヤングアート旋風アートアートアート。/名古屋松坂屋/名古屋
アパートメントvo2/羅針盤/東京
その他多数

個展
2012 丁子紅子展-to live-  /埼玉県大宮石原誠美堂ギャラリー
2014 丁子紅子個展-失う中で、刻むもの-/space2*3  ミツイアート
2016 丁子紅子個展-ここに在る。 -/space2*3  ミツイアート
2015 丁子紅子個展/カフェ&バル PONTE
2017 丁子紅子個展—Wish—/SOZO HARE&MAKE
2017 丁子紅子個展—あなたへ。—/ぎゃらりぃ朋
2018 丁子紅子日本画展—あの日のことー /浦和伊勢丹
2018 丁子紅子個展 沈黙する身体、あるいは真実。/清アートスペース
2019 丁子紅子日本画展 『はなことば。』GUM表参道
2020 丁子紅子個展 鏡花水月/清アートスペース
2020 丁子紅子個展 傍/銀座奥野ビル ギャルリーラー・讃岐うどん青ノ山
2021 丁子紅子個展 溶け合う時。/西武池袋本店6階アートギャラリー

受賞歴
第36回 現代童画展 奨励賞
第37回 現代童画展 入選(賞候補)
第38回 現代童画展 現代童画会賞(会友推挙)
第五回 Next Art展 入選
第39回 現代童画展 上野の森美術館賞
第31回 FUKUIサムホール美術展 入選
第40回 現代童画展 第40回記念会友賞 会員推挙
第42回 現代童画展 会員作家賞
第45回 記念現代童画展 現代童画大賞 

雑誌掲載等
「顔に降りかかる雨」 桐野夏生(新装版)/講談社文庫 
「天使に見捨てられた夜」 桐野夏生(新装版)/講談社文庫 
「ローズガーデン」 桐野夏生(新装版)/講談社文庫 
「DARK」 桐野夏生(カバー替)/講談社文庫 
「月蝕楽園」 朱川湊人(文庫版)/双葉社
「風待心中」 山口恵以子(文庫版)/PHP文庫
「誰?」 明野照葉(文庫版)/徳間文庫

掲載本
「現代画家が描く美と幻想の世界 妖しく美しい女性たち」(総合ムック)/綜合図書
「美人画づくし」池永康晟監修/芸術新聞社
「美人画づくし弐」池永康晟監修/芸術新聞社
「日本画家が描く美人画の世界」辰巳出版 辰巳ムック

その他
それでも尚、未来に媚びる。2nd Mini Album「四季、式として」ジャケット
中村月子 メインヴィジュアル
明日の叙景 1Stアルバム 「わたしと私だったもの」ジャケット
メガネブランド 「VioRou」のブランドヴィジュアル2015~
ファッションブランド「0658」
3rd collection 『Black noise effect』作品コラボ
4th collection 『表裏のエラッタ』作品コラボ
5th collection 『last night cryptogaram』作品コラボ
6th collection 『The under eye』作品コラボ
新潟a crowd of rebellion アルバム「BLACK_:24」, 「:12_White」アートワーク

【公式HP】【twitter】



ジュエリー会社へ就職するも、絵が描きたくて堪らなくなった


Q.  作家、画家を志したきっかけを教えてください。

小さい頃から絵を描くのが好きで高校から美術科へ進み日本画を学び美大へ進学。在学中には作家として生きていく道はあまり見出すことができず、ずっと美術の道まっしぐらできていたので違う世界を見たいと感じジュエリー会社へ就職。

仕事が中心となった生活の中で感じたのは、絵が描きたくて堪らないということ。

会社員としての生活を経験できたことがきっかけになり、自分には絵が必要不可欠だと考え、3年弱働いたのち画家一本で頑張ると決め退職をしました。


Q.2013年から2014年頃に作風がガラっと変わっていますが、現在の作風までの歴史、経緯などありましたら教えてください。


こころ 2012

2013年に大学を卒業したのですが、これまでは自分の心をそのまま絵に投影させ鏡のような絵画でした。

画面に強く、苦しくぶつけることも多かったです。自分の心を浄化させるための絵画だったのだと思います。

しかし大学卒業後、就職したジュエリー会社では接客をしながらお客様のジュエリーの修理を承ったりリフォームのデザインをご提案するような仕事をさせていただきました。


ここに在る。   2014

いままで自分のために絵を描いていたのに、喜んで手に取ってもらうために頭をひねり、手を動かし人に何かを提供する側になる。

そこでふと我にかえり、絵も同じでなくてはいけないんだと感じたのがきっかけでした。そこからは見てくださる方がいるということをかなり意識し、すべて削ぎ落とした“無”というところへ辿り着いたように思います。



心を人物という形に描き起こした美人画


Q.日本画の、そして美人画の一番の魅力、丁子さんが惹かれている点はなんでしょうか?

私は“美人画“にこだわっているわけではありません。

私が絵画で一番表現したいと考えているのが“心”です。心を複雑にもちあわせているものはやはり人であるので、心を人物という形に描き起こしました。

ただ、その存在が美しく尊くあって欲しいと考え美人画を描いています。

女性のやわらかな存在感やライン、表情は一番の惹きつける魅力のように感じます。



Q. 背景には「白」、全体のほとんどを白、黒、赤で構成され、とても洗練された印象です。「色」の表現についてお話伺えますか。


わたしは色が与える印象はとても大きいものだと考えています。

暗い色を使えば暗い印象を与えるし、鮮やかな色合いで描けば元気な印象を与えるかもしれない。

絵画を最終的に完成させてくれるのは見てくださる方だと思っています。

なので優しく見えたり、ときにはかなしく見えたり、強く見えたり。人によって捉え方がたくさんあって良い。

そのような可能性を引き出すには、できるだけ“無”に近づける必要があると思ったのです。

なので白と黒を基盤としました。その中に差し色で赤という生きている色を使うことで絵画の強さとメッセージ性を作り出せるのではと考えています。



何度もなんども重ねることで、深みが浮き出てくる


Q. 透けるように白い肌、艶やかで繊細に描き込まれた黒髪が女性の美しさを際立たせています。肌の“透け感”、髪の“線”が丁子さんの画力を際立たせていますが、描く上でのこだわりなどございましたらお聞かせください。

肌は何度もなんども違う色を挟みながら薄く絵の具を重ねていきます。

そうすることで自然な血色や深みが浮き出てきてくれます。



髪の毛はキラキラと光の強い岩絵の具を使用しています。作品を見なくては伝わらない日本画の魅力の一つであり、吸い込まれる一つのきっかけになったらいいなと願いながら使っています。

その上から一本一本白で髪の毛の線をひたすらひいてはまた黒を重ねての繰り返しで仕上がっていくのですが、この重ねて塗る工程はとても大切だと感じています。



Q. 髪の長さは違うものの、どの女性にも「前髪」があるのが印象的でした。髪型についてはいかがでしょうか。


先ほど“無”を大切にしたいとお話しさせていただきましたが、眉毛ってすごく表情をみせる部分の一つだと思うのです。

どうしてもすごく人らしく感じ過ぎてしまうため、あえてぱっつんの前髪にして眉毛を隠しています。



とりまく環境をすべて捨て、ただただ絵に没頭した


Q.ご自身の作家活動において影響を受けた作家、人物などはいらっしゃいますか?

浅田真央さん

同い年ということもあり、勝負して生きていく上での精神や高みを目指す姿。自分のやるべきことへの責任感の強さをとても尊敬しています。


Q. 作家人生の中で、挫折やターニングポイントとなった出来事などありましたら教えて頂けますか?

会社員を辞めて1年目は本当に辛い毎日でした。

絵を描く時間が増えたはずなのに全くいい絵が仕上がらない。

なんだかんだで締め切りに間に合うように出しているような日々の中、バイトも掛け持ちをして精神と肉体的にも崩れていく日々でした。

そんな生活をしていたら体を壊し、二ヶ月ほど静養をしなくてはならなくなりました。その静養期間にいろんなことを考え、今まで休まっていなかった頭をしっかりと休ませ自分と向き合うことができました。


挫折後描いた作品 たしかなもの。

そして今の自分にとりまく環境をすべて捨てることを決意し、ただただ絵に没頭して描き上げた作品が自分でもわかるくらいにいい出来だったことがありました。

この時に本当に絵だけで食べていく決意ができたように思います。


Q. 普段制作活動されているアトリエについて教えてください。



祖母の家のリビングをアトリエとして使わせてもらっています。

10畳くらいのスペースです。ココに移ったのは最近で、それまでは実家の6畳の一部屋を借りていました。



生活をする場所と仕事をする場所は分けた方が切り替えができて絶対に良いと感じています。


きっと誰かが大切にみてくださる。そう思うだけで絵の深みが変化していく


Q. 今後、作家として挑戦したいことはありますか?



せっかく日本画という素敵なジャンルに出会うことができて作家をさせていただけているので日本画の魅力を肌で感じていただける活動をしたい。

そのためにはまず知っていただくこと。

人の目にふれる広告やデザインに関わるお仕事をさせていただき画面上や媒体では伝わらない魅力を展覧会で作品を発表して伝えていく。

普段絵を見ないという方にも興味を持ってもらいギャラリーに足を運んでいただける流れを作れるような活動をしていきたいです。


Q. 最後に、アートフルを見ている作家達に向けて一言お願いいたします。

絵は自分のために描くだけではなく、きっと誰かが大切にみてくださる。そう思うだけで絵の深みが変化していくように思います。

どこに自分を変えてくれる何かが落ちているかわかりません。広い視野を持ちながら自分を信じて進んでいって欲しいと思います。

もちろん私自身も。


今後の展示会、活動予定


丁子紅子個展「溶け合う時。」
2021年1月27日(水)から2月2日(火)
@西武池袋本店6階(中央B7)アートギャラリー
営業時間変更 10:00〜19:30(最終日16:00)

この様な状況下ですので、どうかご無理のない範囲で気にかけて頂けましたら幸いです。
よろしくお願い申し上げます。

ファッションブランド ”Beniko Choji”​

出典:Beniko Choji