まるで何かの器具を通して拡大した花の姿を見ているような、緻密で繊細な絵を書く木村さん。生命力あふれる花を題材に選んだのは、とある切っ掛けがあったから。
画家・木村 佳代子さんに、詳しくお話を伺いました。

木村佳代子 / KAYOKO KIMURA
1971 東京都生まれ。
1994 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
1996 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。
1999 東京藝術大学大学院美術研究科博士課程満期退学 。
【HP】 【Twitter】 【Instagram】 【Facebook】
もう一度絵を描くことから始めてみよう
Q.作家・画家を志した切っ掛けを教えてください。
子供のころから絵を描くことが好きで、漠然と絵を描く仕事がでいたらいいなと思い美大に進みました。
大学時代に触れた絵画や現代美術の影響を受け、少しずつ作家として活動するようになりました。

Q. ご自身の活動において影響を受けた作家、人物などはいらっしゃいますか?
絵画としては高山辰雄、ジグマー・ポルケ、ヴィンセント・ギャロなどの作品が好きでした。
人物としては榎倉康二、坂口寛敏といった大学時代の恩師や、身近な友人や作家に影響を受けました。(敬称略)
Q. 作家人生の中で、挫折やターニングポイントとなった出来事などありましたら教えて頂けますか?
20代は精力的に活動していましたが、30代は生活の基盤を整えるために目立った活動をすることが出来ませんでした。
40歳になった年に東日本大震災が起こり、もう一度絵を描くことから始めてみようと筆をとりました。

Q. 現在の作風になる以前は、どういった作品を描かれていたのでしょうか。
写真(銀塩プリント)や金属などの素材を使った平面作品を主に制作していました。
インスタレーションと組み合わせ、空間を構成することで成立する発表形式に注力していました。
切り花を、生と死の象徴に
Q. 美しい花を描いた作品が魅力的ですが、なぜ植物をモチーフに絵を描こうと思われたのでしょうか。
活動初期から宇宙や生死といった概念を画面に落とし込んでおり、それをどんどんシンプルに記号化する作品に移行していました。
東日本大震災の衝撃からより生命に焦点を当てたいと思い、切り花を生と死の象徴として描くことを決め現在に至ります。

Q. まるで何かの器具を通して拡大した花の姿を見ているような、緻密で繊細な描写に圧倒されます。どうやって描いていますか?
特別なことはしていませんが、面相筆などの細い筆を多用します。
厚塗りはしないので、ペインティングよりもドローイングに近い描画方法かもしれません。線の重なりで形を描き起こしていくイメージです。

Q. 美しくきれいな花を描かれることもあれば、ウツボカズラのような、見ていて毒々しくグロテスクな印象を持つ植物をモチーフにされている事もありますね。それぞれどういったメッセージが込められているのでしょうか。
メッセージ自体に大きな差はなく、形の美しさや面白さを感じる花を好んで使っています。
形が特徴的な花はそれ自体に存在感があるので、あまりデフォルメをせずにそのまま描くことが多いです。
チューリップや牡丹など多くの人がよく目にする花は、花の概念を打破するような強さを意識して描いています。
難しい言葉 は使わない
Q. 国内外のアートフェアにも参加されていますが、日本と海外の違いなどを感じることはありますか?
私は東アジアのフェアしか参加したことがありませんが、美術を楽しむことが広く社会に浸透している印象は強くあります。
日本も最近は30~40代のファンが増えてきているようで嬉しいですね。

Q. noteを拝見しました。読んでいてクスリと笑ってしまうような言い回しもあって、とても面白いです。絵以外のnoteやTwitter、ブログなど、文章を通して木村様が世の中に伝えたいことは何でしょうか。
noteについては、なるべく難しい言葉を使わないように意識しています。
美術作家をしていると当然周囲には作家業の友人知人が多いのですが、周囲に美術作家が一人もいないという方々も沢山いらっしゃいます。
そんな方々に少しでも美術に興味を持っていただくきっかけになれればと思っています。
Q. よく植物を観察されるためにお出かけされていますね。お気に入りスポット等はありますか?
近所の植物園をはじめ、東京だと神代植物公園や上野の牡丹苑などによく取材に出かけます。
Q. 普段制作活動をされているアトリエについて教えてください。
古いアパートの一室をアトリエとして利用しています。
近所に梱包材店や金物店などがありとても便利です 。

大きな作品を増やしていきたい
Q. 今後、作家として挑戦したいことはありますか?
発表の目標としては国内外で大規模な個展、制作の目標としては、大きな作品の制作量を増やしていきたいです。
自分の代表作と言える作品をどれだけ多く作ることが出来るか、やはり良い作品を多く作ることが作家としての責任であると強く思っています。
Q. 最後に、アートフルは若手作家に向けてのメディアなのですが、これから作家活動をしていく若手作家に向けて一言お願いいたします。
周りと自分を比較するのではなく、自分自身の短期目標と長期目標を立て、一つづつクリアしていくことをお薦めします。
Q. 今後の展示会や活動予定等ございましたらお願いします。
現在発表できる展示としては、新宿の佐藤美術館(佐藤国際文化育英財団)第30回奨学生美術展に参加します。
秋以降にもいくつか発表があるので、是非SNSをチェックして下さい。