“大阪梅田の街”を描いたイラストがTwitterで大反響を呼んだイラストレーターのハンカチさん。
大阪の地元民からも「梅田はこんなに綺麗な町だったのか…」「大阪市民として感動」「こんなキレイに写真とれるのはiPhoneですか」などのコメントが寄せられた。
写真と見間違うほどのリアルさ、クオリティ、そして美しさを表現するハンカチさんに、イラストレーターとしての生い立ち、作品についてなど詳しくお話を伺いました。

イラストレーター ・ハンカチ
1995年岡山県生まれ(岡山県在住)
専門卒業後イラストレーターとして活動開始。
【公式HP】【twitter】【instgram】

イラスト投稿サイトで目にした鮮やかなイラストの世界は鮮烈だった
Q. イラストレーター、画家を志したきっかけを教えてください。
祖父が大工ということがあり小さい頃から物作りが好きでした。
しかし祖父の作る様な立派な物は作ることは愚か、道具の使い方もままならなかった自分は
幼いなりに絵なら自分の作りたいものが表現できると考えたのが絵を描き始めたきっかけです。
その後中学生になり、親にノートPCを買ってもらい、ネットの世界でデジタルペイントと言うものに出会いました。
その時イラストの投稿サイトで目にした鮮やかなイラストの世界は当時の自分にとって鮮烈で、自分もこんなイラストを描いてみたいと思ったのが
最初にイラストレーターを志した瞬間だと思います。

Q. 現在の作風までの歴史、経緯などありましたら教えてください。
学生だった頃はRPGに出てくる様な背景を描いていました。
しかし自分の中で作風が合っていないと違和感を覚えていた頃、友人に新海誠監督の作品を勧められ
丁度その頃「君の名は」が上映されている最中だったので映画館へ見に行った際、劇場でその美しい背景に圧倒的に魅了され、自分もこんな素晴らしい背景を描いてみたいと勢いのままイラストを描いたのがきっかけです。
Q. “ハンカチ”というペンネームの由来を教えていただけますか?
学生の時ペンネームを考えていた際、自分が良くハンカチを持ち歩いていたので友人に「ハンカチでいいじゃん」と提案されました。
「いつも近くにある、清潔感」がイラストに合っていると勧められ今でもそのまま使用しています。
独自性を見つけようと今も模索している最中

Q. 風景画を主に描かれていますが、特に駅、道路、建物、電車などが多いですが、そのきっかけやコンセプトなどはありますか?
駅は町の玄関口で、その町を象徴する建物が多く立ち並ぶ場所だったり、毎日人々が忙しく行き来し、人々の生活を感じることが出来るからです。
よく鉄道好きと勘違いされるのですが、鉄道が好きと言うわけではなく、鉄道のある風景が好きと言う感じです。

Q. なんといっても写真かと思うほどの「リアルさ」に圧倒されてしまいます。ここまでの画力、表現をするのには相当な時間、努力をされてきたのではないでしょうか。こちらについていかがですか?
何かから逃げたい時や何かを忘れたい時にイラストを描く事に集中することで気持ちを紛らわしていました。
実は中学の時不登校気味で家に篭って絵を描いていたので、良いか悪いかは別として知らないうちに画力が付いてきたのか、ある程度描ける様になりました。
ただ現状、毎回作品を仕上げても達成感があまりなく、何かが足りないと悩みながら新しい作品を描いている感じです。

Q. よく新海誠監督の作品と比較されることもあるそうですが、共通しているのは「美しさ」「繊細さ」「エモさ」だと感じました。ハンカチさんの作品を制作する上での表現について教えてください。
新海誠監督の作品からは大変多くのインスピレーションを頂きました。
作品の背景を念入りに観察し、自分なりにイラストの描き方を解釈して近づけられる様に努力しました。
しかしその過程で独自性が失われて行くジレンマも発生しました。
その独自性を見つけようと今も模索している最中ですが、写真の様にリアルで有りながら、イラストにしかできない描写を強く、空気感やハイライト、影の中の反射を特に意識して作画しています。
何が最善かを常に考えて謙虚な姿勢で活動していきたい

Q. 「大阪梅田」を描いたイラストもTwitterで大きな反響でした。ハンカチさんのイラストが純粋に凄いというのがもちろんありますが、作家のSNSの利用、活用について何かご自身で意識していることや考えていることがありましたら教えてください。
利用法や難しいことで意識していることは無いですが、謙虚さは常に忘れない様にしようとは意識しています。
SNSはフォロワーの数が多いほど権力がある様に思われがちですが、私は所詮人よりイラストが少し描けるだけで、偉そうに出来る事など何もありません。
劣っているや優っているの感情ではなく、何が最善かを常に考えて謙虚な姿勢で活動していきたいと思っています。

Q. 制作過程について教えていただけますか?、また今までで一番描くのに苦労した、時間がかかった作品を教えてください。
①ロケハン、現地で写真を撮ります
②モチーフの選定後、決定した写真をトレスして線画を描きます。
③線画を元に模写の要領で着彩をしていきます。
制作時間に関しては2~3日で出来るものから2ヶ月程掛かるものまで様々です。基本合間で描いて行くので毎日ずっと描いているわけではないです。
これまでに一番苦労したのは梅田の作品です。引きの画角だったので全てが細かく特に屋根の鉄骨が複雑だったので随分苦労しました。

最終的には線画は捨ててしまうのでガイド程度の精度で細かくは描
きません。

ディテールは描き込まずに全体に色を乗せるだけです。

一箇所を描き込まずに全体のバランスを意識して描いていきます。

ます。
ひたすら根気強くディテールを詰めていきます。


Q. 普段制作活動されているアトリエ・制作スペース、機材について教えてください。
実家の自室が作業場になっています。
家から最寄りのコンビニまで徒歩で1時間以上かかる山の中の田舎ですが
年中満点の星空と初夏には蛍の舞う自然の美しい環境の良い場所です。
メインPCはMacBook Pro、外部ディスプレイ出力で使っています。(手狭になってきたので近いうちiMacに買い換えたいです。)サブに自作のWindowsPC
ペイントソフトはAdobe Photoshop。ペンタブはWacom、intuos5です。ロケハンに使うカメラはCanonの一眼レフを愛用しています。

前向きに活動していればいつか陽の目を見る日が来る
Q. 今後、作家として挑戦したいことはありますか?
出来る事ならアニメ作品を作りたいと思っています。
私はキャラクターを描くのが苦手なので一人で完結させるのは難しいですが
動画として動かすのは今後の夢でもあります。

Q. 最後に、アートフルを見ている作家達に向けて一言お願いいたします。
私自身が若手なので為になるか分かりませんが、SNSが発達した今、沢山の人々に自分の作品を手軽に見てもらえる反面、自信を持って作った作品が評価されず悩んだりすることがあるかと思います。
しかし焦れば焦るほど空回りして悪循環を生んでしまうと私は思っています。
評価を気にして焦る気持ちも有るかと思いますが、そんな時は原点に帰って
評価に惑わされず前向きに活動していればいつか陽の目を見る日が来るはずです。SNSの世界は気まぐれです。
今日はダメでもいつか自分の作品が沢山の人に見てもらえる日が来るはずです。