アートで分散投資は可能なのか?

はじめに

 投資の世界ではリスクヘッジする為に金融資産を分散して資産運用ポートフォリオを組むことが一般的に行われていますが、アートの分野でも作品を購入する事で分散投資は可能なのか、今回はお話ししていきます。

アートは誰が購入するのか

 アート作品の購入は生活必需品から最も遠い分野の買い物です。これが何を意味するかというと、アート作品を主に購入している客層は圧倒的に富裕層が多いということです。もちろん購入資金さえあれば誰でも作品を購入する事が出来ますが、「アートで分散投資」を考えるならば、作品を複数所有していることが前提となるので、必然的に資産を多く所有する富裕層が主な対象となるはずです。

アート市場は利回りが魅力的

 フランスの美術品価格情報会社「アートプライス・ドットコム」の調査によると、特に現代アートの分野は2000年以降、年率平均8.9%のペースで上昇し続けていることが分かります。この8.9%という数字は、世界一の投資家バフェットが推奨する「S&P500へのインデックス投資」へ投資した場合の平均利回り7.5%を超えるパフォーマンスです。これは株式や債券、不動産などと比較しても、アートはそれを上回る成績なのです。もちろんアート作品はひとつひとつ異なることと、売買には金融商品より多くの手数料がかかることも念頭に置かなければなりません。とはいえアート作品は作品数に限りがある現物資産であることが特徴であり、株式のように紙くずになる心配はありません。もしも世界的アーティストの無名時代の作品を所有していたとしたら、その作品価値が数百倍以上になることも珍しくない世界です。

またアート作品の価格が大きく上昇する局面としては、2008年に起こったリーマンショックが引き金となり金融緩和が進んだことです。つまり世界中のお金が増えることで景気が上昇し、アート作品の価格も上昇していきます。基本的に世界人口は増加している限り、資本主義社会は年々経済成長を続けていくことが予想されるので、それに伴いアート市場も大きくなり、作品の価格が上昇していきます。また2020年に起きた新型コロナウィルスによって世界中で過去最大級の経済危機が起こり、現在は世界各国の中央銀行がお金を大量に刷っている状況です。その結果、もともとお金に困っていない富裕層はさらに資本を拡大していく上昇局面でもあるのです。投資という観点からアート作品を見た場合、今が「絶好の購入機会」かもしれません。

分散投資するための購入方法とは

 株式投資とおなじくアート作品を分散投資と考えた場合、その選択肢は沢山あります。投資の場合は、各金融セクターの個別株をドルコスト平均法という毎月決まった日に継続投資していく方法があり、有事の際のリスクヘッジを可能とします。ではアートの場合はどのような方法があるのかというと、一番の分散は「分散保有」という手法があります。これは1つの作品を複数人で所有する方法です。初めてアート作品に投資をする人や作品を保管する場所がない人、超一流のアーティストの作品を購入したいけど高額で購入出来ない人でも、作品の部分保有をすることで所有の喜びを得ることができます。

日本ではこの分野はまだ始まったばかりで、投資という観点から一体どれだけのリターンがあるのか検討するには、もう少し時間が必要です。ときに誰もが知る驚くような世界的アーティストの作品を出品しているケースもあるので、検討してみる価値が十分にあるでしょう。そして分散投資の1番の王道が、ジャンルを絞って、若手や中堅作家から有名作家の作品までを分散して購入することです。自分が興味のある好きなジャンルから始めた方が、息の長いアート投資を継続できるはずです。また若手作家に絞る方法もあります。映画「ハーブ&ドロシー」ではニューヨークに住む夫妻が生涯に渡って若手作家の作品を給料の範囲内で購入し、その膨大なコレクションが話題になりました。後に世界的アーティストになった作品もあり、膨大なコレクションが結果的にリスクヘッジへと繋がった例もあるのです。

まとめ まずは趣味としてアートを楽しむこと初めてみよう

 あえてアート作品を所有することのデメリットをあげるとすれば、作品の流動性が低いことです。例えば株式投資なら直ぐに売買が出来ますが、アート作品は買い手が見つかるまで売却ができません。だからこそアートを購入した先にある、アートを所有することを楽しんでほしいと思います。日本のアートマーケットがまだまだ小さいからこそ、投資の選択肢のひとつに「アート」を検討する人が1人でも多く増えることを願っています。資産運用のポートフォリオのなかに「アート」を検討する価値は十分にあるのです。