「アートとクラウドファンディング~新しい投資のカタチ~」

<はじめに 評価経済という新しい投資のカタチが生まれている>

 SNS全盛の時代において、従来の経済の流れも少しつづ変化してきました。そのひとつが「インフルエンサー」とよばれるtwitterやinstagramなどのフォロワーが1万人以上いるプレイヤーです。そのインフルエンサーも規模の大小があり、例えばフォロワーが何十万人いるよりも、数万人のフォロワーを持つプレイヤーがクラウドファンディングなどを使って、素早くお金を集めるケースも珍しくなくなりました。

これは既存の経済システムやフォロワーの数字だけを比較した人気度では計れない作用が働いているからです。従来のマーケティングでは想定していない部分とも言えるでしょう。大事なことはその発信者にどれだけ「熱狂的なファン」がいるのか、その熱さや深さも「評価経済」という新たな物差しで測られる時代に突入しているのです。

<オンラインサロンという経済圏>

 「評価経済」の流れのなかで誕生したコミュニティのひとつが「オンラインサロン」です。これを新たな宗教と揶揄する声もありますが、オープンなSNSで支持を集めて、クローズドなサロンというコミュニティを形成する流れが加速しています。サロンは基本的に誰でも入会できるので、共通の話題や趣味を持つ人同士が簡単に繋がるようになりました。例えば芸能人だからといって簡単に人が集まるのではなく、もっと細分化されたコミュニティが支持されているのです。

サロンをひとつのコミュニティとしてだけでなく「新たな経済圏」と考えてみると、日頃から互いにオンライン上で仲間と切磋琢磨することで新たなサービスが創出され、それがコミュニティ内でも圧倒的な支持を得られたなら、いざ事業化するときにも事業資金が集まりやすいのは自然な流れではないでしょうか。こうした潮流がアートの世界にも到来しているのです。

<まとめ アートとクラウドファンディングの関係>

 国内のクラウドファンディングといえば「CAMPFIRE」や「READYFOR」などがありますが、アートで検索してみると様々なプロジェクトを見ることが出来ます。そのなかでも目標金額をいち早く達成しているプロジェクトの多くが、SNSなどで熱狂を生み出しています。

なぜならプロジェクトに賛同して支援する場合、金額ごとに様々なリターンが存在しており、これは人気の幅の広さよりも深さを持つ人物の方が、大小さまざまな金額のリターンを得る傾向が圧倒的に高いからです。つまり、これは今後のアートやアーティストの生存戦略において、既存のギャラリーなどに所属していなくても仕事ができる選択肢が増えていることを意味しているのです。

アーティスト本人がSNSでプロジェクトごとにクラウドファンディングをすることも可能な時代だからこそ、重要になってくるのが本人の信用を日頃から貯めておくことではないでしょうか。自分自身がどこのレイヤーでポジションを取りに行くのか、戦略的に動くという意味で経営者的な資質があるアーティストは、今後さらに支持を集めていくはずです。そうした社会や経済の新たな潮流から、新世代のアートが生まれてくるはずです。