美術品投資は投資ありきになっては失敗する

美術品投資のあるべき姿


美術品の売買で利益を得ると言う本来の流れは、気に入った絵画などを購入し十分楽しんだ後、売却した時に発生するものでありました。売却額が購入額と比べて著しく高かった場合、投資が大成功したかのように思えたものでしょう。これからもそんなことがあるはずと、投資を目的に大金を投じようとするのもわからなくはありません。

最近では、中国の骨董品を日本から中国に持っていくだけで直ちに莫大な利益も狙えるようになっていることもあります。
しかしブームに乗せられたまま、速攻で投資に走ってしまうと慌ててタイミングを誤ったりもするものです。もっと美術品が資産としてどのような役割を果たしているかを勉強してからでも遅くはありません。長い目で見ても美術品投資は安定した投資であることは確かなのです。

世界的なリスクヘッジとしての美術品価値


日本人は現金を銀行に預けておけばとりあえず安心だと思っているせいか、貯金額が欧米人に比べて格段に高いようです。欧米人は資産を美術品やワインさらには競走馬のような資産に持っていく傾向があるようです。国がどうなるかも貨幣価値がどうなるかもわからなかった世界では、現金などに信頼は寄せていなかった長い歴史があるからのようです。

最近でもリーマンショックの対応として、絵画を担保にしたローンが人々の生活を救っていたのです。その結果、日本人が思うより安全な投資先として認識されているのかもしれません。また投資先としては、不動産のように固定資産税もかからないのも魅力なのでしょう。

投資ありきでは儲からない理由


投資をするなら投資のことに集中すれば良さそうなものですが、それがそうはいかないところが美術品投資です。そこに美術商が絡むと話は違ってしまうのです。

<美術商が売ってくれない>
まず、投資価値ばかりを気にしている客に、美術商は投資に適した美術品を売ってくれないと言うことがあります。さらに気になることに適正価格以上の価格で販売しようとするケースも見受けられることです。

それでは素人への嫌がらせのようでもありますが、そこには美術を大切にしている美術商のプライドと言うものもあるでしょう。価値のわかる客に価値を楽しんでもらいたいのは、全ての商売人の性癖とも言えるのです。もっとも価値がわかる客であれば、それだからこそ高い価格でも堂々と販売できることもあります。
投資しか頭にない人は、価値もわからず少しでも安くして欲しがってくるのです。

<商売的にも成り立つ>
また、価値のわかる良い客は先々になって購入した美術品をまた同じ美術商に売ってくれることもあるようです。美術品は中古品として値下がりするようなものでもありませんので、美術商は売買を繰り返すほどに利益が得られることにもなるのです。
それは良いものほどその利益は大きくなりやすいので、必然的に目の肥えた客を優先してしまうのです。

作者の哲学を理解しようとすること


美術品を投資目的だけでなく、室内の装飾品として場のグレードを上げることをも目的にしたい人もたくさんはいることでしょう。もちろんそれだけで儲かるものでもありません。
もっと認識するべきは、その作者が作品を通じて何を表したかったかに思いを馳せ作者の気持ちを理解しようとすることまでが求められるのかもしれないことです。

これは結果的にそのような人が投資に成功している事例が多いとされているからであって、そのプロセスは説明し難い面もあります。これまで価格が数十倍、数百倍となった幾つもの美術品の流れを追いかけてみると、そのようなことが目立っているのです。
わかりやすいのがピカソの一見、訳のわからない絵画でしょう。最初から億単位の価格が付けられてはいなかったのは想像に難くないことです。