1点モノだから絵画の値段が上がる

絵画の値段が上がる要因は何か。1番の理由は絵画が1点モノであるから、という明確な答えがあります。もちろんシルクスクリーンや版画など量産できる素晴らしいアート作品も存在しますが、絵画の「1点モノ」としての価値が他のジャンルよりも高額なことが、価格でも証明されています。これはアートに限らず経済原理そのものなのです。

例えば人気アーティストになると、価格も上昇しますが、それだけ多くのコレクターがその作品を求めていることになります。しかし作品は量産されるものではなく、1点モノなので、市場になかなか出回らず手に入りません。つまり人気作品とは「需要と価格のバランス」が絶妙に重なった状態なのです。それが1点モノの絵画の値段が上がる仕組みを生み出しているのです。

他のケースの場合もあります。なかなか出回っていない人気絵画がオークションなどがきっかけで高騰したとします。生存するアーティストの場合、一夜にしてその価値がさらに上昇して、過去の作品や新作などの価格も連動して上がることがよくあります。
また1点モノならではのケースとして、過去に遡って誰が所有していたのかも付加価値になります。

例えば有名な美術コレクターが保有して価値が上がることもあるのです。これは1点モノならではの特性と言えるでしょう。日本有数の現代アートコレクターといえば、精神科医の高橋龍太郎氏ですが、そのコレクションは高橋コレクション展として美術館でも展示されるほどの影響力を持っています。

当然、現代アートの販売をするギャラリーとしても、主要なコレクターに優先的に所属アーティストの作品をご紹介しています。こうして様々な付加価値が付いた作品は、アートマーケットの中で値上がりする可能性が極めて高いのです。
もちろん投資対象としてみたときにも、これほど魅力的な商品はほとんどないでしょう。株価のように、日々、ボラティリティが激しいこともなく、アーティストの価値が高まるごとに例外なく価格上昇を続けていくからです。

では、なぜ絵画が1番高価なアート作品なのでしょうか?その理由の1つが「絵画は人類が生んだ最古の芸術であり最新の芸術である」ということが言えるでしょう。
紀元前から続く美術の歴史はとてつもなく長く、今日まで美的な価値を前進させてきました。アートの王様である絵画には、1点モノという「希少性」が市場でその価値を保証し続けてくれるのです。

またアートの歴史に新たな文脈を創ることも価格の上昇には必要な要素です
例えばジャクソン・ボロックの作品は現在210億円と高額ですが、これは絵画の歴史のなかで初めて顔料をキャンパスに垂らした「アクション・ペインティング」という手法で発表したからです。これをボロック以後に発表しても、ここまでの価値にはならないでしょう。つまり絵画の技術だけでなく、新たなコンセプトを創ることにも価値があるのです。

以上のように、様々な要素が加わることで、1点モノの絵画作品は値段が上がるのです。