SONY SUZUKIインタビュー-羽田沙織-

SONY SUZUKI「ビジュアルと音楽と文章のミックス」-羽田沙織インタビュー-

フェミニンな色気とロックの匂いを感じ取ることができる、ネオグラム画家SONY SUZUKI。その作品はペインティング、コラージュ、シルクスクリーン、木彫作品と多岐に渡って発表しています。

そして今回、自身初となる画集「インストゥルメンタル・ユース」(論創社)出版記念展を自由が丘・DIGINNER GALLERYで開催中(9月5日~9月22日)の個展『INSTRUMENTAL YOUTH』において発表。

新たなステージへと昇華したSONY SUZUKIさんに、フリーアナウンサーでアートエバンジェリストとして活躍する羽田沙織がインタビュー。


SONY SUZUKIさんと羽田沙織 DIGINNER GALLERY(自由が丘)店内

作品との対話が楽しめる作品作りにこだわり


SONY SUZUKI

(羽田)アートの世界に入った切っ掛けを教えてください。

(SONY)ありきたりですけど子供の頃から絵を描くのが好きで自分で何か作りたいという気持ちから絵を描きたいと思う様になりました。

(羽田)制作にあたってのコンセプトはあるのでしょうか。

(SONY)青春絵画です。死語っぽいですけど青春のエネルギーみたいなものが好きなのです。

(羽田)自作の額も1つの作品というのは拘りもあるのですか。

(SONY)額に入っていると”しゃん”として整うのは分かっていましたが、市販の額を展示会の為に複数買うとなると結構な金額になるので中々難しい。なら自分で作ったらどうすればよいだろう?考えた末に出来たのがこういった額付き作品の形になります。
自分で彩色するので絵の一部としてコントロール出来るところがポイントです。

(羽田)SONYさんの作品は見る人が想像する絵ですね。

(SONY)そう言ってもらえると嬉しいです。

絵を観ていただいた方からたまに「自分は絵心が無い」とか「アートが分からない」と言われることがありますが、それはナンセンスだと思っていて、言わせちゃいけない事だと思っています。そこに単一的は正解は無く、見て興味あれば観る。なければ観なくてもいいものだと思っています。

関心があるものに対して、何故関心があるのかを確認することが「鑑賞」だと思うんです。確認することが無かった場合は「見る力」が無かったのでは無く、興味が無かったからだと思うんです。


(羽田)顔がある人もいれば、顔の無い人の作品もあるんですね。

(SONY)進める過程で段々と表情が無くなってきました。

(羽田)表情が無くなっていったのには意味があったんですか。

(SONY)(書籍の)帯にあるように手塚るみ子さんが「顔のない人間が冷たい様で実はぶつぶつ語りかけてくる」と非常にうまい表現をしてくださったのですが、人の顔というと、人種や年齢が特定されたりして絵の見方がはっきりしてしまう。

誤魔化しているのではなく、可愛い、格好いいといった目に見えるものより内面を表現する為の流れとして自然とそうなりました。口角が上がっている・下がっていることで感情を表すよりも分からないようにした方が、却って感情移入し易く、絵との対話ができると思ってこのようにしています。

実は今回の展示で在廊している時に観に来られた方の中で、「こういった顔の見えない人物は今のコロナ禍におけるマスク社会を意識した肖像画ですか?」と聞かれたのですが、そういう意図を持つ前に描いた絵であるのに面白いな、と思いました。
実際外に出れば世界中で多く人がマスクで顔を隠した顔の見えない世界ですから(笑)。

過去の経験や印象が今の世界観を作っています


ガーデンパーティー

(羽田)こちらの作品は?

(SONY)ガーデンパーティという作品です。90年代にニューヨークに住んでいて、友人の家の庭でパーティをやっていたのです。その時の状況を強く記憶していて、リアルな当日の状況再現ではなく、ムードを描いた作品になっています。言うなれば心象風景になりますが、言葉の上でのそれと実際のギャップを明らかにするのが姿勢であり、絵のポイントだと考えています。

(羽田)鮮やかな色が印象的ですね。

(SONY)色には拘っています。一時、色が無い白黒の絵を描いていた時期もありましたが、今は色がよりよく見える作品を作成しています。

(羽田)背景や床に所々にダイヤがあるのですが、これは?

(SONY)これは自分が子供の頃に観ていたプロレスや歌謡番組の影響を受けていると思います。当時のテレビカメラの性能のせいじゃないかと思うのですが、光るライトと向き合った時に、そのライトを中心としてギラーッと十字のエフェクトをかけた様な光の筋ができていました。そんな描写が例えば少女漫画だと瞳の中に描かれたり、夜景の外灯のシーンでもこういったダイヤの筋が描かれていましたがそういう印象の影響だと思います。

(羽田)音楽が好きだと伺っていますが、音楽がベースにあるんですね。

(SONY)ベースは絵画ですが、やはり音楽から受けた影響は大きくて、そこから自分の知らない国や文化を学んだり、理解することで自分の理想の世界観がつくられた気がします。なのでそういう要素が絵に出ているのかもしれない。

ビジュアルと音楽と文章のミックス。それもアートに対する触れ方の一つ


ネオグラムバンド「VINNY VORN」のポートレイト

(羽田)こちらの作品のテーマと言うか、音楽で表現するとどんな曲が後ろに流れているのでしょうか。やはりロックなのでしょうか。

(SONY)ロックに限ってはいません。ダンスミュージックやロック、レゲエ、ジャズなど色んな音楽を好んでいたので、特別これだっていうのはないんですが、絵画と音楽を連動するものをやりたい気持ちはあります。

(羽田)出版された本の中には、QRコードが記載してあり音楽が聞けるとのことですが?

(SONY)QRコードをスキャンするとオリジナル曲のページにリンクして聴ける様になっています。


SONY SUZUKI画集「インストゥルメンタル・ユース(論創社)」

(羽田)7名のバンドなのですか?名前はあるのですか?

(SONY)6名で、これとこれは同じ人です。

(羽田)バンド名は?

(SONY)VINNY VORN (ビニーボーン)。

(羽田)面白いですね。

(SONY)実は元々この本のタイトルは『Vinny’s Book』で『ビニー本』と考えていたんです。それで主人公のビニーの物語ということで出版しようとしたんですが、比較的NGを出さない出版社の担当者がそれだけは止めてくれと言って。

要するに昔の猥褻なビニ本と混同されるとセールスに影響するからと。それだったら本のタイトルでなく、設定上のバンド名にすることで方向性を考えていこうかなと思って。

(羽田)なるほど。それではこの曲はソニーさんが作っているのですか?

(SONY)曲はバニーボーイというミュージシャンが担当しています。僕はVINNY VORNというバンドのビジュアルアートとコンセプターを担当している2人のコラボレーション・ワークとなります。

(羽田)とてもユニークですね。

(SONY)展覧会で絵を見る。あるいはアートブックを通してビジュアルとして観るだけではなく、ZINEやスマートフォンを通して文章と音、映像などとを組み合わせて楽しむ事も一つの鑑賞方法かなと思っているので、VINNY VORNコンセプトで次にはもっとワクワクする様な展開を既に考えています。

(羽田)ありそうで結構無いですよね。前にある展覧会を見に行った時に、絵画の側にキャンディボックスが置いてあり、鑑賞中にこれを舐めながら作品を見て欲しいという作品があって凄く良かったんです。この作品はこの飴。こっちの作品はこの飴といったように。

私は味覚とか嗅覚とかそういう感覚みたいなものと、アートは密接に繋がるものだと思うので、違った感覚をミックスさせた鑑賞の仕方も面白いなとその時に思ったんです。だから音楽と一緒にアートを楽しめるのは、音楽とアートを愛するものとしては凄く魅力的です。


(SONY)あと僕が若い時の音楽の聞き方と、今の若い人の聞き方は確実に変化したと思います。

(羽田)昔はどういう風に聞かれてたんですか。

(SONY)以前は今に比べると非常に限られた情報の中で、雑誌情報や友達同士のコレクションをシェアするなどしていた気がします。他には雑誌やラジオ、クラブなどで見聞きした情報を元にレコード店で試聴するとか。自分で発掘して良いものまで辿り着く手間と時間が違う。今は下手すりゃ自分の知らない好きなものが向こうの方から勝手に近寄ってきますから。でも簡単に辿り着けないから楽しい。行かなければ行けないから良いを前提に当たり外れ含めて真剣に聴いていた気がします。

それが楽しかったからハマっていったんだと思うんです。そんな「音楽は楽しかったな」っていう要素が絵画に加えることで、自分のモチベーションとしても凄くポジティブな状態で描けるなと思ってやっています。

展示空間に貼られた「シールの彫刻」


シールの彫刻

(羽田)こちらの作品はバンドメンバーとは関係ないのでしょうか。

(SONY)これは「シールの彫刻」という別の絵で、幼少期に買ってもらった雑誌の付録についていた安っぽいキャラクターシールが元になっている絵です。

今だったら無料のおまけと思いますけど、目当のシールは一枚しか付いてないからすごい貴重なんです。それをどこに貼ろうかっていうのを考えるわけです。貼る位置や角度はこれで良いのかとか。僕は相当慎重にやっていたと思うんです。

今考えるとあれって絵画的な構成だと思うし、僕個人の絵を描く衝動の、最も初期的なアートワーク体験だったと思います。


だから僕は自分の絵のモデル達をこのシールの彫刻というフォーマットで展示しているというか、空間に貼る事で少年時代の感覚で展示をする事が出来るし、これら複数を壁一面に貼れば、壁全体を一枚の絵として見せられる、ということで始めたシリーズなのです。

(羽田)それも面白いですね。それでは最後に今回の展覧会について一言お願いします。

(SONY)今回は作品を色んな見せ方を上手くDiginner Gallaryというスペースを使って纏められた良い展示になってると思います。見て楽しいと思える要素を含めることが出来たなと思うので、是非お近くにいらっしゃる際にはお立ち寄りください!

(羽田)今後のビニーボーンの活躍も楽しみでなりません。個人的に音楽雑誌のインタビュー風の作品を凄く楽しみにしています。映像とかは考えないんですか。

(SONY)もちろん考えています!

(羽田)凄い楽しみです。色んな幅がどんどん広がりますよね。

(SONY)楽しいとか、面白そうというテンションで見てもらう事を、僕は理想としています。

(羽田)楽しみにしております。

SONY SUZUKI 個展【INSTRUMENTAL YOUTH】

会期:2020年9月5日(土) – 9月22日(火) /月曜休廊
開館時間:12:00 – 20:00/最終日17:00迄
会場:DIGINNER GALLERY
住所:東京都目黒区自由が丘1-11-2
※自由が丘駅 北口より徒歩1分
電話:03-6421-1517

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DIGINNER GALLERY WORKSHOP

ソニー・スズキ / SONY SUZUKI
1969年 東京都生まれ

SONY SUZUKI

1996年、NYブルックリンへ渡米。NYではアーティストに師事し、様々な技法を習得し、作品を発表。2001年に帰国し一旦は筆を置いたが、数年後よりアート活動を再開。

ネオグラム画家としてペインティング、コラージュ、シルクスクリーン、木彫作品などを多数作品を発表。木彫作品の「シールの彫刻」シリーズや初の書籍「インストゥルメンタル・ユース(論創社)」を発表し更なる飛躍が期待される。

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羽田 沙織 / Saori Hada
フリーアナウンサー / ラジオDJ

羽田沙織

元NHK宇都宮局キャスター、元ZIP-FMナビゲーター。
ボートレースJLCアナウンサー、テレビ埼玉「ようこそ埼玉市議会へ」、FM世田谷で活躍中。

アートが好きで美術館やギャラリーへ足を運ぶ一方、アートライターやアートエバンジェリストとしての活動も行う。
FM世田谷で毎週土曜日放送『サムディ プティ シエル』ではパーソナリティを努め、その中でアーティストやギャラリー紹介のコーナーを行う。

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