アートと資本主義~「使用価値」と「交換価値」の関係~

  • 2020年8月14日
  • 2020年8月28日
  • コラム

<はじめに>  

 アートと経済の関係は常にセットとなっています。アートに商業主義を持ち込むことの賛否は個人の哲学によって意見が異なりますが、「資本主義」の世界にいる限り、アートと資本主義の関係性を意識しておくことで、作品がどのように価格設定されているのか、その背景を理解することができます。今回は「使用価値」と「交換価値」の関係から、資本主義とは何か、アートの価格、そこに生じるパラドックスについてお話ししていきます。

<使用価値と交換価値の関係>

 今から400年ほど前の西暦1600年代前半、オランダでは「チューリップ・バブル」という世界初のバブル経済事件が発生しました。バブルのピーク時はチューリップ1つの球根に対して、馬車24台分の小麦や豚や牛も数頭、他にも大樽のビール、数トン分のチーズやバターなどが購入できるほど価格が高騰したのです。ではなぜこれほど球根の価格が上昇したのかというと、チューリップそのものに魅了された価格上昇ではなく、チューリップを所有することで得られる「モノの交換価値」に多くの人々が熱狂したからです。

本来、チューリップは観賞用としての「使用価値」しか持っていません。そのため月日が経つと際限なく高騰するチューリップの価格に対して、買い手がいなくなるのではという不安がオランダ中に広がり、ある日を境に価格は暴落したのです。この現象は「資本主義のパラドックス」として、大変興味深い現象です。なぜなら使用価値が低いことで価値の転換が起こり価格が上昇するからです。加えて永続的に価格が上昇を続ける為には、使用価値に加えて「希少性」が必要であることがチューリップバブルによって証明されたのです。だからこそチューリップの価格が再び高騰することはないのです。これはアートの世界でも同じことが言えます。

<アートの世界も同じ原理>

 実はアートの世界でも同じ原理が働いています。なぜならアート作品は基本的に「1点モノ」であり、様々な要因から作品に価値があると認められると、たちまち価格は高騰します。その理由は多くの人が購入したいという需要があるにもかかわらず、供給する作品は量産されないからです。チューリップとの違いは「希少性」にあると言ってもいいでしょう。常に希少性があるからこそ、アートは「資産」としても魅力的な対象とされてきたのです。

<S&P500と高利回りのアート>

例えば資本主義の王様である米国の経済成長を測る指針の一つに「S&P500」と呼ばれる株価指数があります。これはNASDAQに上場している500銘柄の株価から算出された数字です。世界一の投資家ウォーレン・バフェットも著書「バフェットの遺言」のなかで、遺産の9割をS&P500に投資することを推奨しています。

S&P500を長期にわたって運用した場合の平均利回りは年平均で7.1%(1973年~2018年)ですが、これは30年間投資をすると資産が8倍になるほどの高利回りなのです。ではアート市場はどうかというと、作品によっては青天井と言えるほどに高騰し続けている作品も存在するのです。その代表的な例がポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルが1962年に発表した作品「キャンベル・スープの缶」です。当時1点100ドルで合計32点を発売しましたが、32点セット持ち続けたギャラリーオーナーは、後の1995年にニューヨーク近代美術館によって32点セットが約1500万ドルで買い上げされ、実に4600倍以上の高利回りを実現しました。アートの世界ではこうした事例も珍しいことではないのです。

<まとめ>

 アート作品は使用価値が低くとも希少性の高まりによって交換価値が高騰するので、それが価格へと反映されます。資産運用としての役割を担うアートは、その一方で資本主義のカウンターカルチャーとしての役割も担っています。これがアートならではのユニークな特性でしょう。今回はアートを違った側面から見ることで、アートの付加価値を考えるきっかけをにして欲しいと思います。