個人事業主であれば、節税にもなる美術品

税制改正は美術品投資にも関わる


投資として購入した不動産物件には、固定資産税がかかってしまいます。
美術品にはそのような負担はかからないだけでなく、個人事業主であれば税制上のメリットがあることはあまり知られてはいないでしょう。
これは平成27年から美術品にかかる減価償却資産制度が変わったことによるものです。
美術品の購入費は、諸条件を満たせば経費として計上でき減価償却の対象として認められるのです。

ただこの諸条件と言うのが、結構、厄介に感じられるものではあります。
とかく日本の税制は公平性を期そうとするがあまりか、巧妙な脱税の手口を恐れているのか、変にややこしいと言う人もいます。確かに美術品のようなものは税金対策としては、扱い次第でメリットを受けやすいものなのです。それは購入する時だけでなく譲渡する時にも関わってきます。
ここではその全貌に触れるのは、難しく字数的にも無理な話です。
減価償却対象の諸条件に絞り、それもかいつまんでみたレベルでしかありませんので、興味を持たれたら勉強してみるのがおすすめです。

前提条件


・古美術品、古文書などではない
減価償却資産とは年数経過により価値が下がるものとされています。
ですから、その経過年数が価値となっているような歴史的物件は対象にはならないのです。

・購入目的が私用ではないこと
事業所のステータスを上げる装飾品とするものに限られ、つまり従業員や来客者に向けての存在であることで広報としての役割も認められています。
あるいは飾っておかなくても将来、飾る可能性があるとか、転売するかもしれないので倉庫に保管していたとしても事業経費として認められるようです。
売却の際に購入費を原価として経費に計上できるのです。
とにかく個人の鑑賞用のためでなければ良いと言えそうです。

原則100万円未満であること


以前は美術品については、購入価格が20万円(絵画であれば号2万円)未満を減価償却資産として認められていました。
これが平成27年から絵画であっても全て100万円未満にまで切り上げられたのです
この判定額は購入に伴う運搬料、保険料、保管ケースなどの諸経費も含めた価格となります。
絵画、陶磁器などは耐用年数8年、金属製の像などは耐用年数15年(屋外展示であれば5年)などとされています。
この耐用年数の間は、購入価格を按分して経費として扱えることになるのです。
また30万円未満では減価償却資産ではなく、消耗品経費としてその年だけ計上することができます。

・100万円の根拠
100万円未満の美術品の購入だけにこのような特典を与えたのは、美術界を盛り上げようとする政策でもあります。
新人アーティストの作品が数10万円で取引される実態を鑑みて、これにより新人アーティストの後押しをすることにもなるからです。
大体の目安として一定の評価が与えられた作品は、一気に100万円以上の値が付くと言う美術界の線引きもあったようです。数10万円であれば購入もしやすく、将来の値上がりを期待しやすい価格帯でもあるでしょう。
ピカソの数億円の絵画も最初は誰でも買えそうな価格から取引が始まったのですから、夢を掴むチャンスの後押しをしてくれているかのようでもあります。
また100万円以上する美術品でも、例外的に「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」であれば減価償却資産として認められます。
しかしその判定は個別の案件によるもので、原則は無いと思っておくべきでしょう。

特例、例外もある


一般に税制の悩ましさは、その特例、例外の多さにありますが、ここでもそれはあるようです。
そもそも法律を読んでも理解し難い表現も多々見受けられるものです。
購入目的や購入金額だけでは一筋縄でいかないケースもあるようですので、安易に思い込まず必ず税理士など専門家に確認をしておくことを習慣にしておくべきかもしれません。