作品の価値をあげるためのSNSの使い方

2019年現在、世界中でスマホが普及して爆発的に発展した分野がSNSでしょう。誰もが気軽に写真を自身のSNSで投稿することが一般的なったことで、無料でメディアを持つことが可能となりました。
アートの分野で言えば、一昔前は美術館やギャラリー、各種媒体などの専門分野に関わる人材しかアクセスできなかった情報が、ネットの普及で情報のアーカイブが急速に広がりスマホで一気に拡散しました。情報収集の時間が圧倒的に短縮された現代社会において、YOUTUBEなどの映像は時代も並列で比較できるようになった分かりやすい例でしょう。

そんな時代におけるSNSの活用による作品価値向上とはどのような方法があるのか興味深いところです。例えばアンディ・ウォーホルがシルクスクリーンを活用して「誰もが3分間有名人になれる」ようにした手法は、アートの大衆化です。
これは人気俳優やミュージシャンなど、誰もが知りながら会えない人物をモデルに起用して繰り返しシルクスクリーンで量産することで、手の届かない人物を身近に感じさせる作用があります。これは現代におけるSNSの手法と良く似ています。

例えばSNSを通じてアーティストと会話できるようになったり、アーティストの日々の声を聞くことで、より親近感を覚えた経験がある人は多いと思います。つまり作品価値向上には、SNSを使って継続的に発信を続け、その過程で様々な試行錯誤を繰り返しながらフォロワーを増やしていくことで、自身のファンや発信力を増加させていくことが1番重要ではないでしょうか。

フォロワー数が資産になる時代においてはそこが重要視されるはずです。とはいえ、それはアートだけに限った話ではありません。
アーティストならではの哲学でSNSの活用をアートの文脈として発表したのが、世界的に人気のリチャード・プリンス(米国)です。「New Portraits」と題して、なんと赤の他人のインスタグラム画像を転写して、コメント欄のみプリンス自身が書き加えているものを全37点発表しました。

そして1作品1000万円前後で販売されて全て完売したのです。
実際、インスタグラムに投稿された画像は転用しても著作権侵害にあたらず、この規定を突いたことで作品が誕生したのです。この作品は賛否両論、様々な論争を巻き起こしましたが、これこそプリンスの狙いではないでしょうか。

意図的に炎上させることで問題提起を計った作品として美術史に残ることになるでしょう。現代の消費社会や人間の欲望について問う、とてもコンセプチュアルな作品であり、現代アートが1番重要にするものは技法ではなく、新たな文脈を創り出したコンテキストにこそ価値があるのです。

つまりSNS自体も単なる作品発表の場ではなく、SNS自体が作品でもある、ということなのです。どのように活用していくのか、そこにアーティストならではのオリジナリティが発揮されることを楽しみにしています。