「美術品には税金はかかるの?アート投資を行う上での税金解説」

アート投資をしてみようとする方の多くが、既に株式や不動産など何らかの投資を実践していると思いますが、いざアートを購入した際の税金はどのようになっているのか知らない方も多いはずです。今回はアートにまつわる税金のお話をさせて頂きます。

 アート作品を法人名義や個人事業主名義で購入した場合、平成27年1月1日以降に取得した作品は税法上、1点につき100万円未満であれば経費にすることができます。そのため減価償却資産に該当します。そして1点につき100万円以上の高額作品の場合、アート作品は非減価償却資産に該当します。つまりアート作品で高額なものは、作品価値が下がりづらく資産運用としての価値があることを意味しているのです。
また美術館によっては作品を多く所蔵しており、常設展が充実している場合、定期的に作品を入れ替えます。例えば展示しない作品を倉庫に保管することもあるでしょうが、この場合、展示可能な状態で保管してあれば減価償却の対象となります。また減価償却の耐用年数ですが、国税庁のHPによると、室内装飾の金属製品は約15年、室内装飾のうちその他のもの(絵画、彫刻など)は約8年となっています。ちなみに絵画の場合、額縁の金額も本体価格に含まれます。

 次に美術品の相続についてですが、保有する美術品は相続税の課税対象となります。保有者が亡くなって相続人が相続の開始があったことを知った日を基準にして、10ヶ月以内に相続財産を申告して相続税を納める義務があるので注意しましょう。

 今後の課題として、どのように日本にアート市場を築いていくのかという問題に直面しています。現状、アート市場は富裕層によって支えられています。富裕層がアート作品を税控除目的で購入して、結果的に作家やアート産業を支えているのも事実なのです。その点、日本の税法はアートに厳しいといえるでしょう。例えば日本と香港で1000万円のアート作品を購入した場合、約80万円も税金に差がつくのです。アート産業を盛り上げていくためには、日本の美術館に作品を献上したら税優遇があるなど、なんらかの政策が必要ではないでしょうか。浮世絵をみたくてもニューヨークに行かなければ鑑賞できない、という厳しい現状を理解することが大切です。
このように日本のアートマーケットが変わるためには、美術に対する税制改革が急務ではないでしょうか。日本には世界に誇る素晴らしい美術の歴史があり、アートの世界を引っ張るポテンシャルを持っています。税制という大きな壁を越えていくために、官民が一体となり、国家戦略としてアートに取り組むことが期待されています。