画家として開業届を提出する事で受けられる税制上のメリットとは

画家として開業届を提出する事で受けられる税制上のメリットとは

画家として生計を立てる際に、知っておきたいことの一つに「画家として開業届の提出を行う」ことです。

開業届を税務署へ提出する事により、個人事業主となります。つまり、個人事業主になる事で、確定申告時に経費を計上することが出来たり、青色申告により税制上のメリットを受けることが出来るようになります。

それでは画家の為の、開業届について解説していきます。

画家として開業届を提出する事で受けられる税制上のメリットとは

開業届とは

開業届とは、個人事業主としての開業を税務署へ知らせる書類です。

それでは個人事業主として活動する人は開業届を必ず提出しないといけないのでしょうか。
開業届は所得税法第229条により、事業を開始した個人に対して、開業届の提出を義務として定めています。しかし提出をしないからといって罰則が科されることはありません。

では画家はどのタイミングで個人事業主として開業届を提出すべきなのでしょうか。
原則としては画家としての活動を開始してから1ヶ月以内ですが、画家としての収入が以下の二つのケースに当てはまるタイミングで提出する事も一つです。

・副業として画家を行っている場合:年間の所得が20万円を超えた時
・専業のフリーランスとして画家を行っている場合:年間の所得が38万円を超えた時

このタイミングで確定申告が必須となりますので、開業届を提出する事で大きく節税が出来るようになります。

画家が開業届を提出するメリット

画家は個人事業税が非課税

開業届を税務署へ提出し、個人事業主になると生じる義務に、個人事業税の納税があります。これは個人事業主が納める地方税になります。
※所得が290万円を超えた場合に掛かってきます

個人事業税は業種ごとに納める税率が定められており、主に3~5%の税率となっています。

しかしこの個人事業税ですが、開業届を提出する際に記入が必要な「職業欄」に、「画家」「芸術家」などと申告する事により、個人事業税が非課税となります。「画家」や「芸術家」は個人事業税が定める業種には入っておらず、課税対象外となります。

確定申告時に青色申告を利用できる

青色申告は確定申告時、税制上において大きなメリットを受けることが出来る方式となります。そして青色申告を利用するには開業届の提出が必須となります。そして更に「青色申告承認申請書」という書類を税務署へ提出する事で、晴れて青色申告を利用する事が出来るようになります。

青色申告に似た白色申告という方式もありますが、税制上の優遇が大きいのは青色申告です。もし「青色申告承認申請書」を提出しないと自動的に白色申告となり、優遇が小さくなってしまいます。

最大65万円の特別控除

青色申告で一番大きいメリットが、最大65万円の特別控除を受けることです。
特別控除を受けることで、収入から最大65万円が引かれたものが課税所得となり、大きな節税になります。

課税所得 = 収入 – 必要経費 – 各種控除(最大65万円の特別控除を含む)
所得税額 = (課税所得 × 税率) – 課税控除額

また個人事業主に掛かってくる税金は以下の6つになります。

所得税、住民税、国民保険料、国民年金保険料(税)、個人事業税、消費税

この中で、税率の高い所得税に対して最大65万円の特別控除が適用されるので、節税効果も高くなります。

画材代などを必要経費として計上

個人事業主として確定申告を行う際には、展覧会出展費用や画材代、アトリエ代、書籍購入代などを経費として計上する事ができる為、ここでも節税となります。

赤字を3年間繰り越せる

収入から経費を差し引いた時にマイナスとなった場合、赤字となります。
この場合でも、青色申告で確定申告する事により、赤字を最長3年間繰り越すことが出来ます。それにより翌年の確定申告時には、収入からこの赤字分を差し引くことが出来るので、税金を抑える事が出来ます。

給与所得と事業所得を損益通算できる

会社員として働きながら、副業として画家を行っている場合、収入源は2つある事になります。それぞれ給与所得と事業所得となります。

この時に事業所得がマイナスとなり赤字になった場合。例えば絵画の販売から得た収入よりも、経費の方が大きくなり事業所得が赤字となった場合。この時、給与所得から赤字を引いた額が実際の収入となり、確定申告により還付されます。

家族に支払う給与を経費として計上

一定の条件を満たす事で、家族を自分の仕事を手伝ってくれる事業専従者として認められると、専業従事者に支払う給与は経費として認められ、節税となります。

屋号付きの銀行口座の開設

開業届を提出し個人事業主となることで、屋号での銀行口座の開設が可能となります。屋号付きの銀行口座を開設することで、お金の管理がしやすくなり、確定申告に備えることが出来ます。

開業届提出時に考慮すべき事柄

前述のような様々な恩恵を受けることが出来る個人事業主ですが、いくつか考慮に入れておかないといけないこともあります。

一つは本業を持ち副業として個人事業主となる場合、失業保険が受けれない可能性があります。本業の会社を辞めたとしても、個人事業主として失業状態にあるという条件に当てはまらないため、失業保険を受けれなくなる可能性が出てきます。

同じ様に副業として個人事業主となっている場合、本業の会社にも通知されますので、本業の勤め先が副業禁止の場合も考慮に入れる必要があります。

また両親などの扶養に入っている場合は、扶養から外れてしまいます。

まとめ

開業届を提出し、画家として個人事業主になるには、「画家一本で本業として活動するのか」または「本業を別に持ちながら、副業で画家として活動するのか」という切り分けと、画家としての年間の収入での切り分けの2つの軸を持って検討すべきでしょう。

ぜひ多くのメリットとデメリットを比較・考慮して検討してみて下さい。