リアルな現代アートの内情がわかる!映画「アートのお値段」鑑賞レビュー

ナサニエル・カーンが監督を務める映画「アートのお値段」は、アートの価格と価値を巡るドキュメンタリー映画です。
アーティスト、コレクター、ギャラリスト、オークショニア、評論家などがアートの価格と価値をそれぞれの立場で据え、そうして成り立っているのが現在の現代アート市場であると見えてきます。
それは単純に良い芸術作品であれば高い値段がつくというわけではありません。

本編では対象的な価値観を持つ人が沢山登場します。
・アートとビジネスを共存させ大衆の求めるものを提示し、巨万の富を得るアーティスト。

・以前は人気アーティストであったが、大衆から求められているドットペインティングを捨て、自らが求める新しい作風へと変化させる。
その結果アート業界から消えてしまっていたアーティスト。

・現代アートの成れ果ては高級ブランドと皮肉る美術史家。
・企業のロビーに置かれる「ロビーアート」になったらお終わりというオークショニア。

・美術館へ作品を所蔵されるのは、文化的価値を保存されることで名誉であると考えるアーティスト。
・美術館へ展示されることは、転売の果てに辿り着いた墓場というオークショニア。

現在の現代アート市場は、人々の思惑、欲求、信念が取り巻き、そして資本主義という増幅を繰り返す装置によってその価値が膨らんでいきます。
その熱狂に多くの投資家が群がり、数百億円という驚くほどの価格がついてしまうこともあります。

印象的なエピソードに、数多くの作品を所有する有名コレクターが美術館へ数点の作品を寄贈するが、気に入っていた一枚の絵は精巧なコピーを作成し、寄贈後に自宅に飾っています。
そして驚くことにコピー品で十分と笑ういながらこう話します。

「多くの人が値段を知っていても、その価値を知らないんだ。」と。

果たしてアートの本当の価値とは何なのでしょうか

一つにはマネーゲームになってしまっている現代アートですが、それはその人の生き方といった本質を表しているとも言えます。
その意味では作品を作る側のアーティストはトレンドに乗ることも正しく価値があり、自分の求めるものを追求することも正しく価値があるとも言えます。

映画を通してアートに興味を持つ。それも一つの価値でありエキサイティングなことであるのではないでしょうか。