コロナ後のアートギャラリーの在り方

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、4月7日に緊急事態宣言が発令さて以降、企業の実店舗が営業自粛となり、多くの業種で売上が大きく落ち込みました。

例えば、日本フードサービス協会の調査によると、外食産業の3月、4月の売上高(前年同月比)は、3月は17.3%減、4月は39.6%減と大ダメージを受けました。

また帝国データバンクの「上場企業(アパレル)の月次売上高動向調査」によると、約9割のアパレル企業の5月の売上は、前年同月の売上を下回ったと報告されています。

店舗の営業自粛、個人の外出自粛が続いた結果、実店舗を持つ多くの企業が売上を大幅に減少させました。

コロナ禍で売上を伸ばすEC(オンライン販売)

一方、売上を伸ばしているのがEC(オンライン販売)です。巣ごもり状態が続いた中、世界中でオンライン需要が高まりました。米国ではコロナ以降の4月末でのECの普及率が約11%増の27%と急上昇しました。

また、アシックスの第1四半期の売上高は前年同期比で13.5%減でした。しかしこの内、EC売上高は前年同月比で57.0%増でした。これは店舗の営業自粛によるオンライン需要の高まりだけでなく、デジタルメディアへの投資を強化したことにより、eコマースでの売上が拡大した結果です。

このようにコロナ禍においても売上減少を最小限に留める、または売上を逆に増大させるにはECを利用することにが非常に重要となってきます。

実店舗とECの融合を図るZARA

オンライン需要が今後も重要となると見据え、いち早く経営方針を変革したのがスペイン発のアパレル「ZARA」です。
ZARAは2021年までに現在経営する店舗の16%に相当する約1,200店舗の閉鎖を打ち出しました。そしてデジタル化の強化に向け、今後3年間で約1,200億円を投資することで、2022年には売上の25%をオンラインで賄うことを目標としました。

実店舗だけ。ECだけ。ではなく、ECの売上の割合を伸ばし、実店舗とオンラインの融合を図ることは今後の生活様式の変化を考えても非常に有効であると思います。

続々提供が開始されるEC機能

そして今、オンライン販売を簡単にサポートしてくれるサービスが次々とリリースされています。
FacebookではEC機能である「Facebookショップ」の国内での提供が開始されました。SNSを介したオンラインショップを無料で作成でき、Instagramでも同時に公開が可能となっています。

またショップ開設数100万店舗突破、2019年10月には東証マザーズへ上場と、近年シェアを伸ばしているEコマースプラトフォーム「BASE」では、ネットショップだけでなく、簡単に自社のショップアプリを作成できる機能の提供を開始しました。

EC、そしてSNSとの連携。アート業界でも作家がSNSで作品を発表し、それを見たフォロワーが作品購入に至るという、新しい購買行動が少しずつ増えてきています。その上でもこういった機能はより強力なツールとなりそうです。

コロナ後のアートギャラリーの在り方

新型コロナウイルスによって引き起こされた、消費活動の変化は長く緩やかに今後も続く可能性があります。そして治療薬やワクチンが開発され安心して外出が可能になったからといって、以前のように実店舗へ足を運ぶといった行動へ100%戻るかは疑問が残ります。

実店舗を持つアートギャラリーに関しても、これまで挙げた様々な例のように、何かしらの変革が必要なのではないでしょうか。

「The Art Basel and UBS Global Art Market Report 2020」によると、世界のオンライン美術品市場は、2013年は31億ドルであったが、2019年では59憶ドルと約2倍に増加しています。
そしてこの期間、ほぼ右肩上がりで増加しています。

アフターコロナの世界では、これらの変化にいち早く適応し、アートの新しい提供方法を提示したアートギャラリーが残っていくのかもしれません。