美術品とオークション関連株の企業分析(国内外)

はじめに メガギャラリーの台頭とアートシーン 

 世界的な現代アートの潮流として、米国のメガギャラリーの拡大化が進んでいます。特にガゴシアン、デヴィット・ツヴェルナーを筆頭に、ニューヨークを代表する現代アートギャラリーの勢いは凄まじく、1950年代から大小様々な規模のギャラリーが登場した群雄割拠の時代も、メガギャラリーの登場によって終焉を迎えそうです。その一方、近年ハイテク企業の最新テクノロジーを駆使したアートが生まれるなど、従来とは異なる異業種から新たな潮流が生まれようとしているのも見逃せません。今回は実際に株式購入が出来るハイテク企業を含めた美術品やオークション関連株をご紹介していきます。

【アマゾン・ドット・コム(AMZN)】

   世界中を席巻するGAFAの一角を担うアマゾンは、ECサイトのアマゾン、サブスクリプションサービスを展開するアマゾンプライム、クラウドサービスプラットフォームのAWSなどを展開しています。ネットで本格的なアートを購入できる「AMAZON FINE ART」では、数万円から数百万円まで幅広いアート作品を選ぶことができます。

 株価は2020年3月中旬から4月にかけて株価も1700ドル~1900ドル近辺まで下落していますが、業績が悪化しているわけではなく、コロナ終息後はさらに業績が伸びていくはずです。他のハイテク企業よりも事業バランスが優れており、様々な分野で収益を上げることが可能な事業構造も魅力的です。GAFAのなかではアマゾンが最も成長力が高いのではないでしょうか。

【アリババ・グループ(BABA)】

 中国版アマゾンと呼ばれる中国最大級のECサイトを展開するアリババは、近年アート文化事業へも積極的な取り組みを見せています。そのひとつが成田国際空港に展示された「アリババクラウドギャラリー」です。アリババが持つ最新テクノロジーとアーティストがコラボレーションすることで、新たな表現世界を拡張させています。直近の株価は180ドル~200ドルの間を推移していますが、直近のEPS(1株あたり利益)は4,78倍と割安であり、長期投資をする前提であれば、資産運用の一つとして検討するのも良いでしょう。

【サイバーエージェント(4751)】

 「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに掲げており、近年はAbemaTVなどのメディア事業やゲーム事業、広告事業、スタートアップ事業など、常に新しいサービスを展開しています。近年はサイバーエージェント出身者で起業したアート作品の少額オーナー権を保有するプラットフォーム「AND ART」にも、代表取締役の藤田晋氏が株主として出資するなど、閉塞している日本のアートシーンへの新しい活路となることが期待されています。近年の株価は4000円付近で推移しており、中核事業であるネット広告市場(国内No1シェア)を中心に、今後の成長性も含めて注目です。

【Shinwa Wise Holdings(2437) 】

 日本国内におけるオークション会社としてのリーディングカンパニーです。 とはいえ2017年に上最高売上高を記録して以降、赤字が続いています。とはいえ業績内訳を見ると、オークション事業は縮小しているものの、プライベートセールといって、作品とお客様をマッチングして売買の成立をねらう売上高は増加しており、今後はいかに特定の顧客に向けた販売を拡大できるのかも注目です。直近の株価は220円代まで下落しています。美術事業以外にもバイオマス発電原料等のエネルギー関連事業も展開しており、新たな収益構造を確立して、事業を安定・成長期へと乗せることができるのかもポイントでしょう。

<まとめ>

  美術品は資本を持つ国や企業へと集まるものです。そういう観点から見ていけば、今後も米国を中心にアートワールドは形成されるはずです。なぜなら先進国の中でも人口が上昇している米国は今後も経済成長を続けることは間違いなく、また世界をリードする米国ハイテク企業から今後の次世代技術を持つ最新アートが生まれる可能性が極めて高いからです。日本でもアートとテクノロジー企業の距離は確実に近づいており、従来のアートの在り方とは違うものが求められる時代に突入するはずです。イノベーションという意味で、次世代技術を持ったテック企業から、新しいアートの扉が開くことが期待されています。