せっかくのアート投資をファンドに任せていいものか

アートファンドも特別なファンドではない


アートファンドは、投資家から集めた資金を元手に美術品を売買して利益を得ようとするものです。
得られた利益は各投資家に分配されることにより更なる資金を投資家から集めようとします。

問題は資金を運用するコンサルタントの力量なのですが、これは他の投資信託などでも見受けられるように必ずしも安定した成績を出せるものでもありません。
と言うのも、そのコンサルタント自身はアートファンドにさほど興味も持たないのに名を連ねることだけでも得られる一定の謝礼などで満足していたりもするのです。
確かに美術品相場全体としては、2000年代から大幅な上昇は見せています。
ですが、かつてのITバブルのように今がその盛りに過ぎない可能性も秘めているのです。
IT銘柄を中心とした投資信託もあっという間に上昇しましたが、あっという間に値崩れを起こしたのも比較的記憶に新しい方でしょう。

この時も実績のある有名投資家の顔写真が並べられた投資信託を、証券会社にすすめられた記憶のある方もいらっしゃるかもしれません。
洗練されたアートのプロに任せるローリスクな投資先と思わせるのは、アートファンドに限らず全てのファンドの共通点なのです。

アートファンドならではの手数料負担


アートファンドの特徴的なデメリットに挙げられるのが手数料の高さです。
同じような現物型の不動産などと比べても特殊な実態があるようです。

・維持管理経費
購入したら売却するまで美術品の価値を維持し続けるための管理経費がかかります。
それも長期になればなるほどその負担は次第に大きなものになってくるのです。

・取引手数料
また売買の際は、ギャラリーやオークションハウスに高額な取引手数料を取られます。
かつては購入の際は10パーセント程度であったのが、次第に上昇し落札額が高くなるにつれ25パーセント程度にまで上がる仕組みになっていたりです。
売却についても概ね10パーセント以上がかけられているようです。
つまりアートファンドに対する手数料には、ファンド運営者の給料の他にこのような関係者の給料も上乗せさせられているようなものなのです。

アートファンドが生まれる流れ


アートファンドが増える頃は、メディアがアートへの投資を記事にしておよそ美術に関心の薄い人たちに向かって情報を発信している頃と重なります。
例えば知名人が有名な絵画をいくらで落札したとか、派手な展示会が開かれるとかです。
これらによってあたかも美術市場が活性化しているように感じた投資家の資金の受け入れ先として登場してくるのです。
メディアとしては需要の高い記事となれば、ますます発信したくもなるという循環が作られます。
これはチャンスとばかりにアートファンドは投資の勧誘話を仕掛けるのもその循環の一つなのです。
これまでもアートファンドは生まれては消える歴史を繰り返しています。
上々の成果を残したファンドも無くはありませんが、思惑とは違って景気の動向にも押し流されてしまうことも多いようなのです。

アート投資のメリットは展示できてこそ


根本的に美術品に値段を付けるのは難解な仕事です。
まず本物かどうかの疑わしさをクリアしなければなりません。
たとえそれが贋作であってもそれなりの値段の付け方もあることでしょう。
総じて流通量は少なく、何と言っても値段の根拠となる需要も供給もその波に安定さが欠けていて予測するのも困難なのです。
それでも投資したければ、やはり展示して鑑賞することの精神的メリットを尊ぶことではないでしょうか。
上手くいけば投資にもなるくらいの感覚で鑑賞していれば、ゆとりある暮らしを支える価値も見いだせることでしょう。
ファンドであれば、それができないのがつらいところではないでしょうか。