新表現主義、アウトサイダー・アート、ボディアート、ランドアート、メディアアート、シミュレーショニズム-美術ヒストリ-

美術ヒストリー


新表現主義

新表現主義はニューペインティングとも呼ばれ、全盛を極めたミニマルアートの反動で生まれた芸術運動です。抽象表現の文脈を踏襲しながら、今までの美術の歴史ではアートと認められていかったラフで激しい描写と強烈な色彩をキャンパスに残しています。この手法の代表的な画家がアンゼルム・キーファーとバスキアです。キーファーはキャンバス上に描く際に、多種多様な素材を利用して描いています。意図的に経年変化していく作品は仏像に通ずる「わび」を感じます。一方のバスキアはモチーフに「金持ちと貧乏」など対照的な出来事に焦点を当てて描きます。これを「挑発的二分法」と呼んでおり、作品の要素の中に事件や社会問題を取り上げ、そこに詩やテキストなどの様々なイメージを重ね合わせるのが特徴です。アートワークをする中で、それは自己の感情を描く行為なのか、自己を消滅させる行為なのか、現代アートは絶えず揺れ動きながら進んでいるのです。

アウトサイダー・アート

別名アールブリュットと呼ばれ、美術教育などを一切受けずに制作された作品群を指します。いわばアートワールドの外側に位置しており、アートの文脈と全く接触しない芸術家がここに該当します。そのため、ときに作家本人が亡くなった後に作品が見つかり評価されることも少なくありません。精神疾患を抱えている表現者も多いものの、何がインで何がアウトなのかも含めて、まだまだ解釈に議論の余地があるのも特徴です。アウトサイダーアートの代表的画家の一人であるヘンリー・ダーガーは、作品「非現実の王国で」を作家本人が19歳から亡くなる81歳まで、実に60年もの長い年月をかけて、なんと1万5000ページに渡る超大作を残しています。

ボディアート

身体を媒体とした芸術表現です。自分や他人の身体にボディペインティングをしたり、肉体を追い込んだ作品があることも特徴です。芸術の分野ではパフォーマンスアートにカテゴライズされています。ボディアートの作品のなかには、アーティストのマリーナ・アブラモヴィッチ本人が出演した「リズム10」のような極めて実験的で痛みを伴う作品も存在します。身体を使って社会やイデオロギーに問題提起を行う作品が多いのも特徴です。近年は科学技術の発展とともにボディアートの領域も拡張しており、AIや仮想空間上の身体など、従来の枠組みでは収まらない新たな身体性をテーマとする作品が次々と生まれています。

ランドアート

ランドアートはいわば地球全体がキャンバスであり、作品も大きなスケールで発表されるのが特徴です。ホワイトキューブのギャラリーとは異なり、展示する場所の地理的条件を取り込んで完成します。そのため他人を意図的に排除するモダニズム的な思想とは大きく異なり、サイトスペシフィックな側面や環境芸術としての側面を併せ持っています。ときにアース・アートやアース・ワークなどと呼ばれるのもそうした理由からでしょう。日本ではアーティストの荒川修作が作った「養老天命反転地」や「三鷹天命反転住宅」などがランドアートの代表作として有名です。

メディアアート

メディアアートとはテクノロジーを使い、現代アートの文脈にカテゴライズされるデジタルアート作品の総称です。例えばコンピュータアートやビデオアートもメディアートの領域でありながら、明確な定義がないまま今日に至っています。そして今後はさらに定義付けが難しくなるかもしれません。メディアが従来の「メディア」として残るのはもはや不可能でしょう。テクノロジーの発展によって「メディア」そのものがどのような変遷を辿っていくのか、興味が尽きない部分です。また「装置」を使った作品群であるため、写真もメディアアートとして捉えることができます。その他にも作品の特性上、双方で体験できるインタラクティブな作品が多いのも特徴です。

シミュレーショニズム

広告PRや企業ブランディングによって認知され、誰もが知っているようなヴィジュアルや絵画などを作家本人が意図的に取り入れ、新しいアートの文脈を作る芸術運動が80年代のニューヨークで盛んになりました。アメリカを代表するアーティストのリチャード・プリンスは、マルボロなどの広告写真をそのまま模写した作品や他人のインスタグラムを無断使用した作品を発表して物議を醸しています。なぜならインスタグラムに投稿された写真は著作権侵害にあたらないため、そのルールを利用した秀逸な作品を、アート作品として提示しているからです。従来の唯一無二の作品を必ずしも絶対視するわけではなく、様々な実験的思考によって、戦後のアートが一つの到達点に達したのもシミュレーショニズムの功績といえるでしょう。