シュプレマティズム、ロシア構成主義、新造形主義、形而上絵画、ダダイズム、シュルレアリスム-美術ヒストリー

美術ヒストリー


シュプレマティズム

シュプレマティズムは「絶対主義」を意味する言葉で、ロシアの画家マレーヴィチが考案した抽象絵画の哲学とも言えるでしょう。キュビスムを応用する形で生まれ、絵画や四角形、三角形、十字など極めてシンプルな形と線で構成された絵画です。抽象表現のなかでも「冷たい抽象」と呼ばれるほど落ち着きがあり、思考の深みがあるのもポイントです。絵画の要素として意図的に意味や物語性の一切を排除することが徹底されています。植物などをモチーフにしながらも純粋に芸術を感じることを目的に、色や形は普遍的に存在すべきだと考えたのです。そうした運動が背景となり、後のロシア構成主義へと多大な影響を与えていきます。

ロシア構成主義

ソ連で誕生したロシア構成主義とは、ロシア革命が起こる前に華開いた前衛的な芸術運動のことを指しています。きっかけはウジミール・タトリンがピカソのアトリエを訪ねた際に出会った「コラージュ」という技法にあります。それを基にレリーフを作り始めたことが全ての始まりです。木材や金属など様々な異素材の組み合わせた作品のことを「構成」と呼び、ここに彫刻作品における美術史の歴史ではじめての抽象作品が誕生したのです。工業製品を利用して、身近な生活を前進させる実験的な試みとして、構成主義は社会的にも広く認知されていきます。特にロシア国内ではデザインや建築、舞台美術などの分野で受け入れられ、芸術と科学が混じり合う実験的な時代がここに誕生したのです。

新造形主義

新造形主義とはオランダの芸術家ピエト・モンドリアンによって提唱された幾何学的に世界を捉えた抽象主義として、絵画やデザインなどの分野に大きな影響を与えていきます。特徴は個人の感情を表現するのではなく、シンプルな造形要素の組み合わせにより普遍的な美を最大限まで高めようという芸術運動です。作品は三原色と四角とグリッドで構成されており、直線と純粋な色彩を最も単純な要素で成立しています。またモンドリアンは「デ・ステイル」という雑誌とグループを作り、絵画や彫刻だけでなく、様々なジャンルへ哲学が共有されていきます。この運動によって、バウハウスやダダなど国境を越えた様々な表現活動が広まりをみせていきました。

形而上絵画

形而上とは、実際に目で見て確かめられない事象の本質を捉え、直感的に探求することです。なかでもイタリアの芸術家ジョルジョ・デ・キリコは、形而上絵画の最重要人物です。キリコは自然現象の背後にある認識不可能な世界についての表現手段として「デペイズマン」を用いました。これは芸術の分野では奇妙な組み合わせによって、鑑賞者に意図的な違和感を与えようとした手法です。空虚で静かな都市空間、現実には起こりえない奇妙な風景、古代と現代のモチーフが並列に共存するなど、なんとも形容しがたい不思議なリズムと調和がある世界は、哲学者のニーチェに決定的に影響されています。こうして後のシュールレアリスト達に絶大に支持されていくのです。

ダダイズム

ダダイズムはスイスのチューリッヒで生まれた芸術運動です。当時は第一次世界大戦の最中にあり、窮屈な現実の反動として生まれました。象徴的な出来事として詩人トリスタン・ツァラの「ダダ宣言」が世界中の芸術家に支持され、ヨーロッパだけでなく、ニューヨークや東京などへも伝播していきます。その特徴は伝統的で常識とされた価値観を壊し、新たな芸術を作ることにありました。さらに芸術よりも大きいとされる人間の理性そのものを否定する政治的な側面もあります。これはルネサンス以降に理性を信じてきた西洋人にとって、理性を否定することは文明の否定を意味し、それだけセンセーショナルな出来事でもあったのです。そこで生まれたのが作為を無くし偶然性に任せた表現やコラージュであり、無意識の状態で何ができるのかを模索した時代でもあったのです。

シュルレアリスム

20世紀に入り、画家は見たままを描くことには満足しませんでした。そうした時代背景の中で現れたのがフランスの詩人アンドレ・ブルトンが提唱したシュルレアリスム思想であり、芸術的主張です。日本語では超現実主義とも訳されています。シュルレアリストの多くは精神分析学者のジークムント・フロイトの書物に大きな影響を受けており、芸術は完全に目覚めた理性によって作られるものではなく、非理性によって目覚める内なる子どもと野蛮人の表出によって生まれるものだという主張を展開しました。こうして出来上がった作品は、鑑賞者にとって奇怪にすら見えるかもしれませんが、先入観を持たずに空想に身を委ねることで、作品のような奇妙な夢を体験出来るかもしれません。